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ニューノーマル時代、
生き残りを賭け
金融機関が行うべき
システム変革のポイント

こちらの記事は2020年11月に日経XTECHに連載されました


ニューノーマル時代の生き残りを賭け、今後どのような取り組みを行うべきなのか――。これが、多くの日本の金融機関にとって重要なテーマとなっている。収益の急減と信用コストの増加が懸念される一方、多くの金融機関ではレガシーシステムが足かせとなり、新しいニーズに即応できない状況も顕在化している。こうした状況を打破し、金融機関が“あるべき姿”へと進化するには、どのようなアプローチが必要なのか。世界70カ国で多様な金融ソリューションを提供するブロードリッジ日本法人のキーパーソンに、最新テクノロジーを活用した金融システム変革のポイントを聞いた。

the new normal era

災厄が浮き彫りにした日本の金融システムの課題とは

緊急事態宣言前後において、日本の金融機関では様々な問題が発生した。株価の大幅変動などに伴い、急激な取引量の増加により発生した負荷に対しての耐久性の備えが不十分であった複数の金融機関で処理遅延やシステム停止などの障害が発生したことはその一例だ。また、障害に備えた冗長構成や待機系システムへの切り替えがうまくいかず、復旧に時間を要した例も少なくない。加えて、「多くのシステムにリモートでアクセスできない」といったことから、在宅勤務が迫られた状況でも出社を余儀なくされたケースもあったはずだ。

これらの問題は、従来型のキャパシティプランニングやBCP対策が限界点を迎えていることを示しただけでなく、日本の金融機関特有のクローズドかつレガシーなシステム構成、ペーパーレス化の遅れなどが混乱に拍車をかけた大きな要因だといえるだろう。

「日本の金融機関のシステムは、コンプライアンスやセキュリティ強化の観点から、受発注やその後の清算・決済処理をオフィスで行うことを前提に設計されています。フロントエンドのシステムがいくらデジタル化されていたとしても、ミドル/バックオフィスでは、未だに自動化が難しいペーパーワークが多く残されています。また政府機関などとの専用回線を使う取引や、中央決済機関専用端末を使う処理は、どうしてもオフィスでの操作が必要となります。金融機関が在宅勤務にできない理由は、こうした状況が大きく影響しているのではないでしょうか」と、ブロードリッジ・ジャパンのジェームス・マーズデン氏は説明する。

だが、メインフレームに代表される日本特有のレガシーシステムや、常駐ベンダー体制でのシステムの維持管理、デジタル化の遅れといった構造的な問題は、再三指摘されていたことでもある。

「以前から、金融業界は大きなパラダイムシフトの潮流にありました。例えばアクティブファンドの相対パフォーマンス低下によってパッシブファンドやETF(Exchange Traded Fund:上場投資信託)への資金流出が起こり、収益確保に向けたオーバヘッドの削減と業務効率向上に向けたシステム改革がバイサイドのみならず、間接的にセルサイドの必須の課題となっていました。頻繁に行われる規制強化や制度変更への対応も避けては通れません。国内では金融業者の飽和化による利益制限や、ゼロコミッションなどによる収益モデルの崩壊が起こり、攻めの経営に転じるための商品ラインアップの拡充、ビジネスのグローバル化も不可欠でした。そうした変革への備えがまだ不十分だったところに今回の災厄が降りかかり、停滞していた危機意識が一気に加速し始めたのです」と、同社の光岡 大三氏は述べる。

つまり日本の金融機関は「収益性の向上」「コスト削減」「規制への対応」という3つの課題すべてをグローバル市場もにらんだ形で同時に克服していく“トリレンマ”に対応する必要性に迫られている。当然のことながら、それは従来型のレガシーシステムやアナログ的な業務では難しい。ではニューノーマル時代に向け、金融機関のシステムはどうあるべきなのだろうか。

ニューノーマル時代に向けた次世代の金融システムとは

「日本の金融機関がグローバル市場で勝ち残るためには、AI、Blockchain、Cloud、Digitalといった『ABCDs of Innovation』を活用したシステム変革が必要です。対象となるのはフロントエンドのサービスだけではありません。インフラとなるミドル/バックオフィス業務まで統合しなければ、投資家が求める新たな価値提供は実現できません」と、マーズデン氏は説明する。

こうした金融機関の“あるべき姿”へのアプローチを支援するため、ブロードリッジでは、ミドル/バックオフィスの統合を核とした多彩なソリューションを提供している。

例えば「GPTM」は、1つの基盤上で為替・株式・債券・投資信託・先物・オプション取引といったマルチアセットに対応可能なグローバルポストトレードプラットフォーム。ドル・円・ユーロなどのマルチ・カレンシー、日本語・英語を含めたマルチ・ランゲージ、複数拠点を集約して利用できるマルチ・エンティティにも対応している。国内外に拠点を持つ金融機関でも1つのプラットフォームで全拠点の業務を総合的に管理できる点は大きな魅力だろう。

各種ほふり制度(証券保管振替制度)の業務を総合的にサポートする「JASDECPS」は、顧客の社内システムと証券保管振替機構との間をAPIでSTP化し、約定照合から決済完了に至るまでリアルタイムな処理を可能とする。日銀ネットプロセシング・ソリューション「BOJPS」も、日本銀行金融ネットワークシステムを通して行われるすべての流動性管理を最適化することが可能だ。

「これらのシステムはすべてWebベースで作られていますから、在宅からのアクセスにも対応します。このほか、当局向けの店頭デリバティブ取引などの報告をリアルタイムまたは日次で自動化する『Message Automation』、収益源の拡充として証券貸借取引サービスの充実化が図れる『SFCM』なども取り揃えており、多くの金融機関に利用されています」と、光岡氏は言う。

最新のデジタル技術を実装したソリューションも多い。例えば、「Intelligent Automation」はAIによる例外配分処理の最適化で、突き合わせ業務の効率向上を支援する。様々な業務のリアルタイム監視と警告、異常の早期発見により、業務リスクを軽減し、透明性を高めるだけでなく、学習技術により継続的な改善が可能だ。さらに「clearVELOCITY」は、先物・オプション分野において日本証券クリアリング機構(JSCC)の新清算システムと接続し、ミドル系業務におけるデジタル化を支援するもの。クライアントポータルがあり、金融機関の顧客自身でオンラインにて約定照会、ポジション照会することが可能だ。

東京証券取引所とのジョイントベンチャーであるICJでは、ブロックチェーンテクノロジーを駆使した議決権行使のPoCも既に成功させている。この分散台帳技術(DLT)ベースのソリューションは日本の議決権行使市場のために開発されたもの。複雑な業務運営プロセスの効率化と透明性を改善するものと高く評価されているという。

運用コストを約40%も低減させた国内系証券会社も

ブロードリッジのソリューションを活用することで既に成果を挙げた事例も多い。

例えば、グローバル拠点で個別に運用されていた証券システムのコスト増とデータ管理に頭を悩ませていた欧州系銀行は、ブロードリッジの証券バックオフィスソリューションを導入し、グローバルシステムをAPIで統合。約30%の運用コスト削減と省人化による人材の最適配置に加え、データの一元管理による迅速なレポーティングと分析、フロント業務の刷新なども実現したという。

また、ある国内系証券会社は以前から、東京・ロンドン・ニューヨークの拠点でブロードリッジのバックオフィスソリューションを活用していたが、アジアでは別システムを利用していたため、運用の標準化が図れない課題があった。そこでアジア拠点をブロードリッジのシステムで一本化することで運用コストを約40%低減。グローバルオペレーションの標準化とフロント業務の拡大に必要な拡張性の高いシステムに刷新することにも成功した。

伝統金融とフィンテックの“架け橋”的な存在

なぜブロードリッジはこうしたソリューションを提供できるのか。

「当社はグローバルで50年、日本法人としても22年の歴史を持つ会社です。世界中の銀行や証券会社、資産運用会社などに幅広いサービスと金融ソリューションを提供し、お客様の収益拡大とビジネス変革を支援してきました。そこで積み上げた伝統的金融のノウハウと、いち早くFinTechに着目し活用した先進的テクノロジーのイノベーションによって、伝統的金融とFinTechの“架け橋”的な役割を担ってきたことが、お客様から信頼をいただいている理由だと思います。日本の商習慣も熟知したローカルかつグローバルな“架け橋”としても同様にお役に立てるのではないでしょうか。当社は80を超える市場で証券の決裁処理を行っており、国内メガバンクを含む世界の上位10行のうち8行など、多数のクライアントにサービスを提供しているため、開発コストを相互化することを可能としております。これにより、費用対効果が高く、弾力性及び拡張性のあるソリューションの提供を可能としてまいりました」と光岡氏は言う。

実際にブロードリッジは、S&P 500指数構成銘柄に名を連ねる総収入45億ドルのグローバルフィンテック企業であり、世界中の50%以上の上場企業および投資信託に対する議決権行使を支え、1日に8兆ドル以上の債券および株式取引を処理している。

さらに日本の顧客から高い評価を獲得している大きな要因が24時間365日のグローバルサポートだ。日本独自のサポート拠点もあり、専門知識を持ったスタッフがトラブル対応や運用サポート、業務支援などを日本語で行い、スピード感のある支援体制を構築しているという。

「今回の災厄を受け、当局はリーマンショック時のような厳しい規制や制度変更を実施していく可能性があります。それに伴い、システムの統廃合やインフラ強化がますます重要なテーマになっていくでしょう。これからも当社は、そうした環境変化に追従できる柔軟性と拡張性のあるソリューションを、信頼できるパートナーとして日本の金融機関に提供し続けていきます」と最後にマーズデン氏は語った。

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